運動と栄養 健康づくりのための実践指導

上田伸男/岸恭一/塚原丘美・編

運動と栄養 健康づくりのための実践指導

発行
2013/12/10
サイズ
B5判
ページ数
220
ISBN
978-4-06-156307-0
定価
4,180円(税込)
在庫
在庫なし

内容紹介

栄養指導と運動指導を効果的に実施するための基礎知識と実践.
運動時の代謝を理解し,事例から管理栄養士のスキルアップを目指す.
栄養指導・教育と運動指導を効果的に実施するための基礎知識の習得とその実践.
基礎編で平常時と運動時の違いを明確にし,応用編では事例を通して指導内容を学ぶ.


世界保健機関(WHO)はGlobal Status Report on Non-communicable Diseases 2010 の中で,全世界の年間死亡者5,700 万人のうち,心疾患,糖尿病,がん,慢性呼吸器疾患などの非感染性疾患(non-communicable diseases:NCDs)が63%を占めており,今後も増加が見込まれると報告しています.原因としては,不適切な食事,運動や身体活動の不足,過度の飲酒,喫煙などを挙げています.また,その予防のために,食生活と身体活動を重視しています.

わが国でも,生活習慣病が増加し,その予防対策が進められています.従来は「成人病」と称し,成人(20 歳)の人がさらに20 年が経過し,40 歳ころになると身体のいろいろなところに疾病の兆候が見られるようになり,その兆候を早期発見,早期治療する,いわゆる,「二次予防」を重視した対策が取られてきました.しかし,同じ40 歳の人であっても,元気な人とそうでない人が見られ,単に時間が経過すると,誰もが病気になるわけではないことがわかってきました.そして,それには生活習慣の良し悪しが大きな影響力をもつことも明らかになりました.その生活習慣とは,適切な食生活,運動習慣の持続,節度ある飲酒,禁煙などです.すなわち,病気にならない生活習慣の実践を求める「一次予防」の重要性が認識されてきました.

しかし,これらの良い生活習慣を実践し,定着させることはなかなか難しく,食育推進基本計画(第2 次)でも,その目標の一つに,「周知から実践へ」を挙げています.生活習慣の実践と定着は「わかっちゃいるけど,なかなか実行できない」ようです.本書では,食生活と運動についての正しい知識の提供と実践活動について,栄養学や運動生理学の専門家がわかりやすく記述したものです.食や運動は「両刃の剣」であり,うまく実践すると大きな効果が生まれる反面,誤った方法ではむしろ害が出てきます.正しい実践活動に,少しでも役にたてることを執筆者一同願っています.(まえがきより抜粋)

【執筆者一覧】相澤勝治/上田伸男/岡田希和子/小原繁/上岡洋晴/岸恭一/
 白木啓三/鈴木志保子/塚原丘美/中屋豊/二川健/平坂勝也/三木健寿/
 宮地元彦/柳沢香絵

目次

第0章  はじめに:ヒトにとって適切な運動と食事
 0.1 ヒトは動き,食べる動物である
 0.2  動物とは動くことができる生物ではなく,動かねばならない生物であることの本質
 0.3  ヒトは必要とされる各種栄養素を適切に摂取しているか
 0.4 動かないと身体はどうなるか
 0.5 食べないと身体はどうなるか
 0.6 生活習慣の実践が健康をつくる
 0.7 本書における体力,運動とその単位

【基礎編】
第1章 運動時のエネルギー代謝
 1.1 エネルギー代謝
  1.1.1 エネルギー代謝過程
  1.1.2 体内におけるエネルギー源の利用
 1.2 運動時のエネルギー補給法
 1.3 エネルギー消費
  1.3.1 基礎代謝
  1.3.2 安静時代謝
  1.3.3 睡眠時代謝
  1.3.4 特異動的作用
  1.3.5 活動時代謝量
 1.4 エネルギー消費量の測定
  1.4.1 直接的測定法
  1.4.2 間接的測定法
  1.4.3 二重標識水法
  1.4.4 時間調査(タイムスタディ)法
  1.4.5 加速度計法
  1.4.6 心拍数法
第2章 運動時の栄養素の動態
 2.1 糖質代謝
  2.1.1 糖質の役割
  2.1.2 グルコースの代謝経路
  2.1.3 運動時の糖質利用
  2.1.4 運動に対するグリコーゲンの役割
  2.1.5 糖代謝のトレーニング効果
  2.1.6 運動と疲労
 2.2 脂質代謝
  2.2.1 脂質の役割
  2.2.2 運動時のエネルギー源としての脂質
  2.2.3 トレーニングと脂質代謝
 2.3 タンパク質代謝
  2.3.1 タンパク質代謝の特徴
  2.3.2 運動とタンパク質代謝
  2.3.3 運動時のアミノ酸代謝
  2.3.4 運動とタンパク質必要量
 2.4 ミネラル代謝
  2.4.1 多量ミネラル
  2.4.2 微量元素
  2.4.3 電解質代謝
 2.5 ビタミン代謝
  2.5.1 水溶性ビタミン
  2.5.2 脂溶性ビタミン
  2.5.3 抗酸化物質
 2.6 水分代謝と体温調節
  2.6.1 水分出納
  2.6.2 体温の維持
  2.6.3 体液の調節
  2.6.4 運動時の発汗と水分補給
第3章 運動と運動器:筋肉・神経・骨など
 3.1 筋肉の種類と機能
  3.1.1 筋肉の種類と働き
  3.1.2 筋肉の構造
  3.1.3 筋肉の線維タイプ
 3.2 筋肉の収縮と神経
  3.2.1 筋肉の興奮0
  3.2.2 筋肉の収縮機構
  3.2.3 筋収縮のためのエネルギー
  3.2.4 筋肉の収縮様式
 3.3 運動の調節,プログラムと神経
  3.3.1 筋肉の神経支配
  3.3.2 中枢による運動の調節
 3.4 筋肉づくりの運動と栄養
  3.4.1 筋機能活性化と運動
  3.4.2 筋機能活性化と栄養
 3.5 骨の機能
  3.5.1 骨の機能,構造と種類
  3.5.2 骨組織を構成する細胞
  3.5.3 骨形成と骨吸収の仕組み
 3.6 骨づくりの運動と栄養
  3.6.1 骨の健康を保つための運動
  3.6.2 骨の健康を促進する栄養
  3.6.3 骨の健康を保つための運動と栄養のまとめ
第4章  運動と血液 血液の生理機能:血液の運搬機能と緩衝作用
 4.1 血液の緩衝作用
  4.1.1  酸塩基平衡の調節に対する諸臓器の役割
 4.2 運搬機能
  4.2.1 酸素の運搬機能
  4.2.2 二酸化炭素の運搬
  4.2.3 血液の温度とガス運搬機能
  4.2.4 乳酸の移動
 4.3 赤血球の変化
  4.3.1 赤血球数増加の機序
  4.3.2 連日の運動負荷による赤血球数の変化
  4.3.3 長期運動トレーニングと赤血球
  4.3.4 運動性貧血
  4.3.5 白血球数の変化
  4.3.6 血小板の変化
  4.3.7 運動トレーニングの血糖に及ぼす影響
  4.3.8 運動選手と献血
 4.4 体力と疾病に対する免疫能
  4.4.1 運動トレーニングと感染抵抗性との関連
 4.5 脂質代謝
  4.5.1 筋活動と脂質代謝
第5章 運動と循環器系・呼吸器系
 5.1 循環機能の基礎知識
  5.1.1 循環器系の役割
  5.1.2 循環器系の構成
  5.1.3 心臓
  5.1.4 血管系
  5.1.5 動脈圧受容器反射
 5.2 運動時の循環調節
  5.2.1 運動時の血流分布の変化
  5.2.2 運動時の動脈圧の変化
  5.2.3 運動と心拍出量
  5.2.4 運動時の動脈圧調節
 5.3 運動と呼吸器
  5.3.1 運動と換気
  5.3.2 最大酸素摂取量
第6章 運動と内分泌系
 6.1 グルカゴンとインスリン
 6.2 アドレナリンとノルアドレナリン
 6.3 成長ホルモン
 6.4 性ホルモン

【実践応用編】
第7章 運動する前にすること:メディカルチェック
 7.1 身体状況調査
  7.1.1 チェックの実際
 7.2 体力測定
 7.3 運動負荷試験
  7.3.1 負荷試験の方法
  7.3.2 運動負荷の方法
  7.3.3 運動時の安全管理
  7.3.4 運動耐容能の把捉
第8章 無酸素性運動と有酸素性運動
 8.1 無酸素性運動と有酸素性運動の概要
 8.2 無酸素性運動
  8.2.1 筋肉量増大のための無酸素性運動
  8.2.2 筋収縮の様式
  8.2.3 レジスタンストレーニング
  8.2.4 パワー(瞬発力)トレーニング
  8.2.5  無酸素性運動の中での乳酸性運動と非乳酸性運動
  8.2.6 運動後の筋タンパク質合成の促進
 8.3 有酸素性運動
  8.3.1 有酸素性運動の特性
  8.3.2 有酸素性運動とエネルギー消費量
  8.3.3 運動強度と糖・脂質代謝の割合
  8.3.4  有酸素的作業能力の評価としての最大酸素摂取量
  8.3.5 無酸素性代謝閾値に基づいた運動処方
  8.3.6  主観的強度を利用した有酸素性運動の方法
  8.3.7  運動強度と交感神経,副交感神経との関係
  8.3.8  心筋の収縮・拡張時間を考慮した運動時の心臓異常の予防
  8.3.9  有酸素性運動としてのジョギングを実施するための下肢の筋力
  8.3.10  運動をするタイミング:朝か夜か,食前か食後か
  8.3.11 全身持久力を高める運動
  8.3.12 筋持久力を高める運動
  8.3.13 継続するための工夫
第9章 疲労と運動・栄養
 9.1 疲労とは
 9.2 筋疲労
  9.2.1 筋疲労のメカニズム
 9.3 疲労回復のための運動
  9.3.1 低強度の運動(クーリングダウン)
  9.3.2 ストレッチング
  9.3.3 セルフ・マッサージ
 9.4 疲労回復のための栄養
  9.4.1 炭水化物
  9.4.2 抗酸化栄養素
  9.4.3 水分補給
 9.5 スポーツ現場におけるリカバリーの例
第10章 健康づくりのための身体活動基準2013 とアクティブガイド
 10.1 新しい基準と指針の策定の背景と目的
 10.2 策定の手順と方法
  10.2.1 策定の方向性
  10.2.2 検索・レビュー方法
  10.2.3 文献の検索数・採択数
  10.2.4 データ抽出
  10.2.5 分析方法
 10.3 基準値の検討
  10.3.1 文献の収集とデータの抽出
  10.3.2 基準値の決定の原則
  10.3.3 18 歳以上を対象とした身体活動量と運動量の基準値
  10.3.4 65 歳以上のみを対象とした身体活動量の基準値
  10.3.5 現状に加える身体活動量の基準値もしくは考え方
  10.3.6 全身持久力
  10.3.7 全身持久力以外の体力の参考値
  10.3.8 基準値の簡易な表現方法
 10.4 身体活動基準2013 の活用法
  10.4.1  生活習慣病の重症化予防と運動基準・指針
  10.4.2  身体活動・運動を普及啓発するための考え方
  10.4.3 保健指導における基準・指針の活用
  10.4.4  身体活動・運動を安全に取り組むための留意事項
 10.5  利用者の視点にたった指針:アクティブガイド
 10.6  身体活動基準・指針の今後の課題と普及・啓発の手立て
  10.6.1 今後の課題
  10.6.2 普及と啓発
第11章 疾病の予防と治療のための栄養・運動
 11.1 メタボリックシンドローム
  11.1.1 メタボリックシンドローム
  11.1.2 栄養管理:食生活習慣の改善
  11.1.3  運動療法:生活習慣に運動を取り入れる
 11.2 肥満症
  11.2.1 肥満症
  11.2.2 栄養管理:体重減少を目的としたエネルギー制限食
  11.2.3 運動療法:中強度運動の継続が基本
 11.3 高血圧
  11.3.1 高血圧症
  11.3.2 栄養管理:塩分制限と体重管理
  11.3.3 運動療法:運動による降圧効果は十分に期待できる
 11.4 糖尿病
  11.4.1 糖尿病
  11.4.2  栄養管理:バランスよく適正エネルギー量を守る
  11.4.3  運動療法:血糖コントロールには欠かせない
 11.5 脂質異常症
  11.5.1 脂質異常症
  11.5.2 栄養管理:まずはバランスのよい普通の食事から和食へ
  11.5.3 運動療法:食事療法との併用でより効果が上がる
 11.6 骨粗鬆症
  11.6.1 骨粗鬆症
  11.6.2 栄養管理:十分なカルシウムを補給
  11.6.3  運動療法:骨と骨格筋の両方を強くする
 11.7 その他の疾患
  11.7.1 関節リウマチと変形性関節症
第12章 運動と心の健康:メンタルヘルス
 12.1 運動の心理的効果:気分転換,ストレス発散,リラクゼーション
  12.1.1 スポーツとレクリエーションの語源
  12.1.2 メンタルヘルスへの効果
 12.2 積極的な休養としての運動と栄養
  12.2.1 肥満と休養
  12.2.2 自分の疲労度を評価する
  12.2.3 過剰労働・交代勤務の問題点
  12.2.4 休養を重視する流れ
 12.3 生活習慣の定着:行動変容
  12.3.1 運動実践の概念モデル
  12.3.2 運動継続のための行動変容技法
第13章 エイジング(加齢,老化)と運動
 13.1 老化と運動
  13.1.1 筋肉の老化
  13.1.2 骨の老化
  13.1.3 関節の老化
  13.1.4 運動を実施する際の留意点
  13.1.5 適度な運動方法例
 13.2 加齢と運動障害
  13.2.1 ロコモティブシンドローム:運動器症候群
  13.2.2 サルコペニア
  13.2.3 虚弱
  13.2.4 虚弱とサルコペニアとの関連
第14章 おわりに:健康な生活を目指して
 14.1 寿命と肥満度ランキング
 14.2 生活の中に運動と栄養を
 14.3 生活の中に「栄養」を