ビタミンの新栄養学

柴田克己/福渡努・編

ビタミンの新栄養学

発行
2012/07/30
サイズ
B5判
ページ数
253
ISBN
978-4-06-156302-5
本体
4,800円(税別)
在庫
在庫なし

内容紹介

ビタミンは壊れやすく代謝も複雑で、相互作用の研究も新しい。
基礎知識から研究の成果、食事摂取基準を解説。
サプリメントや服薬との作用などにも言及した。
学生、食品・栄養系の教員、研究者必読書。


  ビタミンは栄養素の中では,一番新しい栄養素である.
 タンパク質,糖質,脂質,カルシウムや鉄などのミネラルがあれば,動物は正常に生育することができるとする時代が相当長く続いた.
 ヒトと物質が世界レベルで動くことができるようになり,富国強兵が唱えられた19 世紀末から20 世紀初頭にかけて,健康と食べ物に関する動物を用いる研究がはじまった.エイクマンはニワトリを用いて,ホプキンスはラットを用いて,タンパク質,糖質,脂質,ミネラルに加えて,未知の栄養素が存在することを示した.この新しい栄養素の実体が明らかにされたのが1910 年12 月13 日である.発見者は,日本人の鈴木梅太郎である.未知の栄養素を,当初「アベリ酸」のちに「オリザニン」と命名した.日本では,12 月13日を「ビタミンの日」として登録してある.
 翌1911 年,フンクが,鈴木と同様の研究成果を発表した.フンクは,米ぬかから単離した成分を「Vitamine」と名付けた.この名前から「e」を除いた「Vitamin」が,未知の栄養素の総称名として使われることが1920 年に提案された.1929 年,ビタミンの発見に対してノーベル賞が与えられた.受賞者はエイクマンとホプキンスの二人であった.
 鈴木博士は,日本人第一号のノーベル賞を逸した.新しい栄養素の名付け親となることも逸した.本書に付録として, 1931(昭和6)年2 月1 日発行の科學知識普及會「科學知識」に掲載された鈴木博士の「回想録」を掲載した(一部旧字旧かな使いは改めた).悔しさが感じられる.
 とにかく,ビタミンは1910 年に日本人が発見したのである.そしてこの100 年間に,13 種類のビタミンが発見され,ビタミンが動物の正常な成長にどのようにかかわっているのかが分子レベルでも明らかにされつつあり,健康長寿を達成するための栄養素量解明に関する研究もほぼ終わりに近づいてきた.豊かな食事ができる現在の日本ではビタミン欠乏症はほとんどない.しかしながら,食事に起因する病気を根絶することはできない.
食事の栄養素量が不適当でも,ヒトは不快さや痛みを伴わないからである.
 本書は,ビタミン発見100 周年を記念し,今までに明らかにされた事実をまとめるとともに,発見100 年を越えて,どのようにビタミン学が発展していくのかについてもまとめた.大学で栄養学関連を教育する先生方および大学院で健康・栄養科学に関する研究を行っている学生をおもな対象者としている.この本をきっかけとして,ビタミン学に興味をもっていただければ大変うれしい.さらに,ビタミンの研究をしてみたくなればなおさらである.
(まえがきより)

【執筆者一覧】市育代/乾博/今井具子/岩川裕美/梅垣敬三/榎原周平/岡野登志夫/亀井康富/薯h原晶子/小城勝相/佐野光枝/澤村弘美/柴田克己/末木一夫/瀧谷公隆/田中清/玉井浩/津川尚子/早川享志/福渡努/星野伸夫/宮本恵美/室田佳恵子/渡邊敏明/渡邉文雄

目次

第I 編 ビタミン総論
第1 章 ビタミン
1.1 ビタミンの発見
1.2 ビタミンの日
1.3 ビタミンとは
1.4 ビタミンは不安定
第II 編 ビタミン発見の歴史
第1 章  脚気の克服:白米の多食からビタミンB1の発見へ(日本)
1.1 脚気の流行
1.2 漢洋脚気相撲
1.3 明治海軍の脚気対策
1.4 明治陸軍の脚気対策
1.5 陸軍脚気大量発生事件
1.6 ベリベリ研究
1.7 未知の化学物質の探索
1.8 ビタミンという名前の考案者
1.9 臨時脚気病調査会からビタミン研究委員会
1.10 欠乏症の機序が不明のために起こった悲劇
1.11 日本は脚気を克服した
第2 章  ペラグラの克服:トウモロコシの多食からナイアシンの発見へ(米国)
2.1 ペラグラの発見と流行
2.2 抗ペラグラ因子の存在の発見
2.3  抗ペラグラ因子(ニコチン酸とニコチンアミド)の発見
2.4 トリプトファンのナイアシン代替効果の発見
第3 章 壊血病の克服:ビタミンC の発見
3.1 壊血病の克服
3.2 ヒトはアスコルビン酸を体内合成できない
3.3 ビタミンC 欠乏実験
第4 章  他のビタミン欠乏症:欠乏食を食べ続けるとどれくらいの期間で欠乏症が現れるか
4.1 夜盲症(ビタミンA)
4.2 くる病(ビタミンD)
4.3 溶血性貧血(ビタミンE)
4.4 血液凝固の遅延(ビタミンK)
4.5  皮膚炎(ビタミンB2,ビタミンB6,ビタミンB12,パントテン酸,ビオチン)
4.6 大赤血球性貧血(葉酸,ビタミンB12)
第5 章 ビタミンの不足と欠乏の診断
第III 編 ビタミンの化学と代謝
第1 章 ビタミンとは
1.1 脂溶性ビタミン
1.2 水溶性ビタミン
第2 章 ビタミンの生細胞中の形態と摂取時の形態
第3 章 消化過程,吸収機構,輸送形式,貯蔵形態,活性型への合成経路,異化代謝
第4 章 ビタミン様物質:バイオファクター
4.1 カロテノイド
4.2 フラボノイド
4.3 ユビキノン(コエンザイムQ10)
4.4 α-リポ酸
4.5 カルニチン
4.6 コリン
4.7 ピロロキノリンキノン
第IV 編 ビタミンの役割
第1 章 視覚機能:ビタミンA
第2 章 ホルモン様作用:ビタミンA,ビタミンD,ビタミンK
第3 章 抗酸化作用:ビタミンE,ビタミンC,ビタミンA
第4 章 補酵素機能:B 群ビタミン,ビタミンK
第5 章 情報伝達機能
第6 章 その他の機能:B 群ビタミン
第7 章 補因子機能:ビタミンC
第V 編 ビタミンの必要量に影響をおよぼす因子
第1 章 栄養性因子
1.1 エネルギー産生とビタミン
1.2 タンパク質とビタミン
1.3 糖質とビタミン
1.4 脂質とビタミン
1.5 ビタミン-ビタミン相互関係
1.6 ミネラルとビタミン
第2 章 内因性因子
2.1 妊娠期と授乳期
2.2 高齢者
2.3 トリプトファン-ニコチンアミド転換率
第3 章 外因性因子
3.1 食品および食器に混入する化学物質
3.2 医薬品
3.3 嗜好品
3.4 生活環境
第4 章 遺伝性因子
4.1 α-トコフェロール輸送タンパク質(α-TTP)の異常
4.2 メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)の異常
4.3 ビオチニダーゼ・ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症
第VI 編 ビタミンのライフステージごとの必要量
第1 章 食事摂取基準の目的:欠乏症からの回避のための基準
第2 章 成人における推定平均必要量あるいは目安量の算定根拠
第3 章 外挿方法
第4 章 耐容上限量
第VII 編 ビタミンに関する最新知識の活用
第1 章 ビタミンの供給源
1.1 脂溶性ビタミン
1.2 水溶性ビタミン
1.3 医薬品および錠剤,カプセル剤,粉末剤,液剤,顆粒剤など
1.4 輸液
第2 章 ビタミンの食事調査とその評価方法
2.1 食事調査法
2.2  ビタミン摂取量を評価するうえで気をつけたいこと
第3 章 ビタミンの栄養状態の評価方法
3.1 健常者の血液中ビタミン含量
3.2 健常者の尿中ビタミン排泄量
3.3 水溶性ビタミンの負荷試験
第4 章 ビタミンの定量方法
第5 章 ビタミンの安全性
5.1 安全性に影響する要因
5.2 利用目的と安全性
5.3 ビタミンのサプリメントと安全性
5.4 個別のビタミンの安全性
付録 ヴィタミン研究の回顧