運動生理学 第2版

岸恭一/上田伸男/塚原丘美・編
シリーズ:
栄養科学シリーズNEXTシリーズ

運動生理学 第2版

発行
2011/04/30
サイズ
B5判
ページ数
161
ISBN
978-4-06-155369-9
定価
2,860円(税込)
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2,860円(税込)

内容紹介

科学技術の進歩は物質的に私たちの生活を豊かにし、産業の機械化、自動化、車の普及、家庭の電化をもたらし、私たちを重労働から解放し、生活を便利にしました。それに伴い、身体活動量は減少して体力の低下を招き、肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を増加させました。これに対処するため、厚生労働省は1978年から本格的に国民健康づくり対策に取り組み、健康づくりの3要素として栄養・運動・休養を挙げました。1988年のアクティブ80ヘルスプランでは、特に運動習慣の普及に重点を置きました。
 運動は、スポーツ選手の専売特許ではなく、一般の人々の体力づくりや健康の維持・増進に欠くことができません。身体活動が減少すると、筋肉や骨が萎縮するだけではなく、生理機能が全般的に低下します。しかし、闇雲に運動すれば良いというものではなく、不適切な運動は筋傷害、骨折、関節障害、循環器障害などをもたらします。運動の効果は、運動の種類、強度、運動時間、頻度、回数などにより異なりますので、運動についての正しい知識が求められます。
 筋収縮の機序、運動時の代謝、生理機能の変化などの基礎的事項から、健康増進のための運動、疾患の運動療法などの応用に至るまで、本書では運動に関する広範囲の領域が取り上げられています。初版は、幸いにして江湖の好評を博し、12刷を数えるに至りました。しかし、初版発行から10年以上が経過し、その間「健康づくりのための運動基準2006」、健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)なども公表されました。そこで、本改訂版ではそれらも取り入れるとともに、編著者を新たに加えて全面的に見直しました。今回の改訂においても、基本的な編集方針は変わりありませんが、章のタイトルを分かりやすい表記に改め、曖昧な字句を修正し、図表も一部新しくし、充実した内容としました。
 本書は、栄養士・管理栄養士はもとより、健康運動指導士やスポーツ栄養士にも活用していただけるものと信じています。本書を通じて、健康づくりのための運動の意義を理解し、運動を正しく実践して、健康な生活をおくられることを願っています。(まえがきより抜粋)

【シリーズ総編集】中坊幸弘/山本茂 
【シリーズ編集委員】海老原清/加藤秀夫/河田光博/木戸康博/小松龍史/武田英二/辻英明 
【執筆者一覧】安房田司郎/上田伸男/上西一弘/大中政治/小澤啓子/加藤尊/加藤秀夫/川野因/岸恭一/小松龍史/杉島有希/鈴木公/鈴木理/塚原丘美/中村弘幸/西田由香/松枝秀二/松原周信/眞鍋祐之

目次

1.なぜ運動が必要か:健康と運動
1.1 健康とは
A. 健康の定義
B. 体力
1.2 運動しないとどうなるか
A. 長期間寝込むと生理機能は低下する
B. 運動不足
1.3 どのような運動をすればよいか
A. 有酸素運動と無酸素運動
B. 生活習慣病の予防には有酸素運動が有効

2.筋肉はどのようにして収縮するか:筋収縮のしくみ
2.1 骨格筋の構造
A. 筋肉は筋線維の集まりである
B. 筋線維の種類
2.2 骨格筋はどのようにして収縮するか
A. 興奮の伝導
B. 筋収縮はミオシンがアクチンを引き込むことにより起こる
2.3 筋収縮にはいくつかの型がある
A. 単収縮と強縮
B. 静的収縮と動的収縮
C. 張力と筋長の関係
2.4 運動は神経により調節されている
A. 筋肉の神経支配
B. 中枢による運動の調節

3.からだのしくみと運動:運動時の生理機能
3.1 運動すると脈拍が増える
A. 循環器とは
B. 心拍数の調節
C. 心拍出量の調節
D. 安静時と運動時の各組織への血流量
E. 運動と血圧
3.2 運動すると呼吸数が増える
A. 呼吸器
B. 運動と呼吸
C. 肺換気量
D. 酸素負債
E. 運動時に換気量が増加するメカニズム
3.3 運動とホルモンの関係
A. 内分泌とは
B. 運動時の内分泌
C. 運動トレーニングと内分泌
3.4 運動時には尿量が減る
3.5 食事直後に激しい運動はしない
A. 運動時の消化管機能
B. 運動時の消化器症状
3.6 運動と免疫について

4.運動に必要なエネルギー:運動時のエネルギー代謝
4.1 エネルギー消費量の測定
A. エネルギー消費量の測定法
B. 呼気ガス分析法によるエネルギー量計算例
4.2 筋収縮のエネルギー源
A. ATP‐クレアチンリン酸系
B. 無酸素的解糖系
C. 有酸素的代謝系
4.3 各種運動のエネルギー消費量
A. エネルギー代謝率(RMR)
B. メッツ(METs)
4.4 作業効率

5.栄養素の働き:運動と栄養素代謝
5.1 運動の種類によってエネルギー源がちがう
A. 運動に使用される骨格筋線維のちがいと糖質・脂質エネルギー比率
B. 運動の強度と持続時間によるエネルギー源利用の変化
C. 食事組成の変化によるエネルギー源利用の変化
5.2 運動と糖質
A. 血糖と運動時のグルコース利用
B. グリコーゲン貯蔵量と運動能力
C. グリコーゲン貯蔵量と食事
D. 乳酸の処理と再利用
E. 運動と糖質代謝
F. 糖質の特質
5.3 運動と脂質
A. エネルギー源としての脂質の役割
B. 運動時の脂肪酸の動員
C. 運動と血清脂質
D. 脂質の特質
5.4 運動とタンパク質
A. エネルギー源としてのタンパク質の役割
B. 運動とタンパク質代謝
C. 運動とタンパク質推奨量
5.5 エネルギーの栄養素別摂取比率
5.6 運動と水分
A. 水の出入り
B. 運動時の水分代謝
C. 運動時の水分摂取
5.7 運動とミネラル
A. カルシウム
B. 鉄
C. その他のミネラル
5.8 運動とビタミン
A. 水溶性ビタミン
B. 脂溶性ビタミン

6.何を食べればよいか:運動と食事
6.1 運動時の食事内容
A. エネルギーと栄養素をどれだけ摂取するか
B. 食事のとり方
C. 各種食品の特徴と役割
6.2 運動選手の食生活
A. 基礎体力強化期(トレーニング期)の食生活
B. 試合期の食生活
C. 移行期の食生活
D. 体重調整期(ウエイトコントロール期)の食事
E. スポーツ障害の回復期の食生活

7.運動すると疲れる:運動と疲労
7.1 「疲れた」とは何か
7.2 「疲れる」原因は何か
A. 疲労物質の蓄積説
B. エネルギー源の消耗説
C. 物理化学的変化
D. 生体恒常性の失調
E. 神経機能の失調
7.3 「疲労」もいろいろ
A. 肉体疲労と精神疲労
B. 局所疲労と全身疲労
C. 急性疲労と慢性疲労
7.4 疲労の評価
A. 自覚症状調査
B. 他覚的症状観察
C. 生理機能検査法
D. 生化学的検査法
7.5 疲労の予防と回復方法
A. 疲労の予防
B. 疲労の回復

8.暑さ・寒さと運動:運動と環境
8.1 運動すると体温はどうなる
A. 熱の産生と放散
B. 体温調節の範囲
8.2 温度や湿度が高いとき
A. 熱の放散
B. 暑いときの体の変化
C. 暑いときの運動はいけないか
8.3 環境温が低いとき
A. 寒いときの体の変化
B. 寒いときの運動に気をつけよう
8.4 圧力が高いとき
A. 水に潜ると呼吸が変わる
B. 吸ったガスに気をつけよう
8.5 気圧が低いとき
A. 山に登ると呼吸が変わる
B. 運動するには酸素が必要
C. 少ない酸素に体が慣れる

9.運動の前に検査を受けよう:メディカルチェック
9.1 健康状態と生活習慣
9.2 安静時の医学的検査(メディカルチェック)
A. 問診
B. 診察
C. 臨床検査
9.3 運動負荷試験
A. 一般的注意事項
B. 運動負荷時の測定項目とその評価
C. 運動負荷試験の禁忌
9.4 運動時の安全管理
A. 運動時の注意点
B. 運動を中止する徴候
C. 運動中の突然死

10.どのような運動をすべきか:運動処方の実際
10.1  運動処方をつくる
A. 運動処方とは
B. 運動処方をつくる前に
C. 運動種目を決める
10.2  運動負荷テストを行う
A. 階段昇降法
B. 自転車エルゴメータ
C. トレッドミル
10.3 体力・運動能力テストとは
A. 体力テストで何がわかるか
B. 新体力テスト

11.健康のために運動をしよう:運動基準
11.1 体力を高めれば健康が増進される
11.2 運動は発育を助け,老化を遅らせる
11.3 日本人の体力
11.4 どれだけ運動すればよいか
11.5 健康のための運動の実際
A. 運動強度の求め方
B. コンディショニング
C. 注意事項
11.6 健康づくりのための運動基準2006
A. 策定の背景
B. 身体活動,運動,生活活動の考え方
C. 身体活動量の基準値
D. 体力の基準値

12.筋力をつけよう:身体トレーニング
12.1 トレーニングの効果
12.2 トレーニングの種類
A. 走行トレーニング
B. 筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)
C. 複合型のトレーニング
D. トレーニングと休養
E. トレーニング計画の実際

13.運動で病気を治そう:運動療法
13.1  運動療法の基本的事項
A. 運動療法の効果はどんなもの
B. 運動療法はどのような疾患に必要となるか
C. 運動療法を行ってはいけない疾患
13.2  循環器疾患と運動療法
A. 高血圧は運動療法で改善できる
B. 虚血性心疾患の予後と運動療法
13.3 呼吸器疾患と運動療法
A. 呼吸不全とは
B. 呼吸器疾患に運動療法が有効
13.4 代謝性疾患と運動療法
A. メタボリックシンドロームと肥満症の運動療法
B. 糖尿病患者の運動療法
C. 脂質異常症と運動療法
13.5 骨・関節疾患と運動疾患
A. 骨粗鬆症とは
B. 関節疾患には運動療法による訓練が必要
C. 骨折や靱帯損傷時の運動療法
13.6 神経・筋疾患と運動療法
A. 脳卒中の運動療法
B. パーキンソン病の運動療法
C. 筋ジストロフィー症の運動療法
13.7 消化器疾患と運動療法
A. 肝疾患(脂肪肝)の運動療法
B. 便秘の運動療法

参考書  
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