緩衝液 その原理と選び方・作り方

澤田清/大森大二郎・著

緩衝液 その原理と選び方・作り方

発行
2009/11/10
サイズ
A5判
ページ数
190
ISBN
978-4-06-154363-8
定価
3,740円(税込)
在庫
在庫なし

内容紹介

目的にあった緩衝液を,選んで,作れる実用書
分析化学,生命科学の実例を用途別に豊富に収載

"溶液の酸塩基平衡は,最も身近な化学平衡であり,また化学の基礎でもある.特に緩衝液は,溶液の pH の調節,制御に関与し,基礎的な実験・理論から,工業的な応用,さらには生命科学にわたる汎用的な概念であり実用的な技術でもある.このような適用分野の広さに対応して,その理論・応用は基礎から各論へと大きく広がっている."緩衝液"を主題とした解説やデータは,種々の専門書,教科書に分散して記述されており,まとめられた教科書,解説書はあまり多くはない.D.D.Perrin と B.Dempsey により "Buffers for pH and Metal Ion Control"(Chapman and Hall(1974))が出版され,"緩衝液の選択と応用 水素イオン・金属イオン"(講談社(1981))として訳本が十数版を重ねている.この本では緩衝液についてのそれまでの歴史的なデータが網羅されている.しかし,その後緩衝液の応用は大きく発展しており,現在の要求に十分に応えられなくなっていると考えられる.
 本書では,緩衝液についての基礎を理解していただくとともに,新しい応用分野も加え,実際に緩衝液を使用したいときの手引書としても用いられることを目的としている.第 I 部では,基礎となる酸塩基の溶液内平衡および緩衝作用による pH 変化を解説した.また,pH 測定,活量,錯形成,副反応などの緩衝作用に関係した基礎的な理論・基準について解説した.第II部では緩衝物質の目的,選択法,そして緩衝液を作製・使用する際の一般的な溶液調製法や使用における基礎的な操作などを解説した.第III部と第IV部は,個々の緩衝液の具体的な調製法を示した実用編である.特に,生命科学分野では目的に応じて多種多様に応用されており,使用法,調製法などは無機・分析分野とは大きく異なっている.このため,応用編は無機・分析分野(第III部)と生命科学分野(第IV)とに分けて解説した.特に第IV部(生命科学)は,測定・実験に即し,各論的に記述した.
 理論か実用か,もしくは無機・分析か生命科学,いずれかのみに興味を持たれる読者のため,それぞれの部で理解できるよう構成した.すなわち,第I部の解説を参照しなくとも基礎を理解できるよう第II~IV部においても,必要最小限の基礎的事項は再度簡潔に解説している.基礎的なpH,酸・塩基の理解から,専門分野のマニュアル的な利用法まで,広く利用いただければ幸いである.(本書まえがきより)"

目次

第1部 基礎編
 1 緩衝液とは
 2 酸塩基平衡とpH
  2.1 水素イオン濃度と pH
  2.2 酸・塩基とは
   2.2.1 アレニウスの酸塩基の定義
   2.2.2 ブレンステッドの酸塩基の定義
  2.3 酸解離定数と塩基解離定数
   2.3.1 酸解離定数
   2.3.2 塩基解離定数
   2.3.3 塩基解離定数と酸解離定数との関係
  2.4 酸塩基溶液の pH
   2.4.1 強酸・強塩基溶液の pH
   2.4.2 弱酸・弱塩基溶液の pH
   2.4.3 酸と塩基の混合物の pH(滴定曲線)
  2.5 溶液の pH と解離平衡
   2.5.1 1 プロトン酸
   2.5.2 多プロトン酸
  2.6 濃度と活量
   2.6.1 溶液の濃度と活量
   2.6.2 活量係数の求め方
   2.6.3 濃度定数と熱力学的定数
   2.6.4 混合定数
  2.7 酸解離定数の温度依存性
 3 緩衝液と緩衝作用
  3.1 緩衝作用と緩衝液の pH
  3.2 緩衝作用の強さ
  3.3 混合緩衝液
   3.3.1 混合溶液の緩衝能
   3.3.2 多プロトン酸
   3.3.3 広域緩衝液
  3.4 単一化合物による緩衝液(自成緩衝液)
   3.4.1 半当量点に相当する酸性塩
   3.4.2 2 段階解離の酸の酸性塩
   3.4.3 弱酸と弱塩基から生成した塩
   3.4.4 両性電解質
 4 pH 測定の基礎
  4.1 pH 測定における基準
  4.2 電極を用いた pH 測定
   4.2.1 水素電極
   4.2.2 ガラス電極
   4.2.3 参照電極
   4.2.4 種々の電極
  4.3 指示薬を用いた pH 測定
 5 錯形成平衡と金属緩衝液
  5.1 ルイスの酸塩基の定義
  5.2 配位子のプロトン付加と副反応係数
  5.3 生成定数と条件生成定数
  5.4 金属緩衝液
  5.5 金属イオンへの副反応

第2部 実用編
 6 緩衝液の必要性,目的
 7 緩衝液の選択と調製
  7.1 緩衝液の選択
   7.1.1 pH
   7.1.2 濃 度
   7.1.3 温 度
   7.1.4 化学的性質
   7.1.5 イオン強度
   7.1.6 スペクトル特性
   7.1.7 保 存
   7.1.8 価 格
  7.2 純水の種類と選択
   7.2.1 前処理
   7.2.2 蒸留法
   7.2.3 イオン交換樹脂
   7.2.4 ろ過法
   7.2.5 電気脱イオン法
   7.2.6 超純水
  7.3 標準溶液の調製法
   7.3.1 溶液調製法
   7.3.2 標準物質
  7.4 緩衝液の調製法
   7.4.1 溶液混合法
   7.4.2 強酸,強塩基添加
   7.4.3 固体秤量法
  7.5 pH の測定法
   7.5.1 pH メータによる測定
   7.5.2 pH 試験紙による測定
  7.6 25 ℃以外の pH の測定

第3部 無機・分析で用いる緩衝液
 8 緩衝液の作製法とその特性
 9 水溶液以外の緩衝液
  9.1 重水中の pH
  9.2 非水溶媒中の pH 測定
   9.2.1 非水溶媒中の pH
   9.2.2 非水溶媒中の緩衝液

第4部 生命科学分野で用いる緩衝液
 10 タンパク質の抽出と酵素反応
  10.1 タンパク質の抽出
     A. pH
     B. イオン強度
     C. 緩衝液に加える添加剤
  10.2 酵素反応
 11 電気泳動
  11.1 セルロースアセテート膜電気泳動法
  11.2 ゲル電気泳動
   11.2.1 核酸の電気泳動
   11.2.2 タンパク質の電気泳動
     A. SDS-ポリアクリルアミド電気泳動
     B. ネイティブ-ポリアクリルアミド電気泳動
   11.2.3 等電点電気泳動
   11.2.4 2 次元電気泳動
   11.2.5 キャピラリー電気泳動
     A. キャピラリーゾーン電気泳動
     B. ミセル導電クロマトグラフィー
     C. キャピラリーゲル電気泳動
     D. キャピラリー等電点電気泳動
  11.3 膜転写
   11.3.1 タンパク質-ウエスタンブロット法
   11.3.2 核酸-サザンブロット法とノーザンブロット法
 12 クロマトグラフィー
  12.1 逆相 HPLC
   12.1.1 カラム
   12.1.2 溶 媒
     A. 溶媒の選択
     B. pH の調整-緩衝液
     C. 緩衝液の調製法
     D. 移動相の調製法-有機溶媒との混合
     E. 脱 気
  12.2 順相 HPLC
  12.3 イオン交換クロマトグラフィー
  12.4 ゲルろ過法
  12.5 疎水性クロマトグラフィー
  12.6 吸着カラムクロマトグラフィー
  12.7 揮発性緩衝液
 13 遺伝子操作
 14 細胞培養

付 録
 付録 1 緩衝能の導出
   1.1 酸‐塩濃度比に対する緩衝能の変化
   1.2 pH に対する緩衝能の変化
   1.3 強酸・強塩基の緩衝能
 付録 2 電極電位
 付録 3 水素イオン濃度で定義する pH の測定
 付録 4 配位子緩衝液
 付録 5 ブレンステッドの定義による酸解離定数